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Mad-R マッド・アール レポート

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Mad-R240mo10.jpg (40903 バイト)今までMad-ULとして存在していたMadの弱風仕様は、今回リネームして「Mad-R」の名称になった。(RはRealizationの頭文字)従来のMad-ULとの違いだが、Mad-Rでは「SUL仕様+UL仕様」の複合仕様となり、飛ばせる風速域の幅が大幅に広がったことである。これは風速1m以下の微風から風速4mプラスの中風までの幅広い風域をカバーできる。まさにバランスの取れたフレームとセイルの全面改良による結果である。弱い風の中でもトルク感をもったハンドリングでトリックさせ、プレシジョン性も損なわず滑らかに奇麗に飛ぶようになった。それは長さ10m以下のショートラインで振り回して飛ばすのではなく、微風下でも30m〜35mのラインで風を掴んで飛ばそうというのものだ。
Mad-R240mo14.jpg (50884 バイト)実はこれらのテーマを達成することは非常に難しかった。スムーズに飛ぶだけなら、あるいは、トリックの種類を限定してしまうなら、カイト重量が軽ければ何とかなる。しかし、一瞬の速いヨーヨーを入れたり、フィネス系から3D系までの多数のトリックを、微風・弱風の中でさえ、可能な限りさせ得るような性能を視野に入れるなら、この軽ささえも弊害になるのである。通常、明確なトルク感をもって、激しいヨーヨーなどをさせようとすれば、カイトにそれなりの重さのバラストが必要となり、最早、微風下ではショートラインでしか飛ばせられない。ヨーヨーも微風下では、ツーアクションでやるか、アクセルからでしか出来ないのが普通であり、軽いものを速いルーイスでヨーヨー・テイクオフさせるようなテーマはカイト・デザイナーにとって難題であった。が、出きるようにした。

Mad-Rのセイルは、その大半に極薄のマイラーを使用している。マイラーは繊維ではないので全く風を通さない。Icarex-PC31g繊維の部分は意匠上のカラーコーディネイトと縫製上の制約のある部分に限られる。またリーディングテープもダクロンではないし、ノーズもナイロンベルトではない。セイル全体の細かな軽量化によって従来のMad-ULの75%の軽量化を行った。そのため、やむなくカラーはモノクロ(ブラック&ホワイト)だけのオンリーワンになり、色違いの用意はなくなった。

Mad-R240mo11.jpg (40441 バイト)フレーム構成はスポーツカイト全体の重量バランスを最も重視して、ロッド重量とロッドのしなりから配分されている。よってロッドの限界までの性能を引き出していると思う。何分、トリックすることが大命題となれば、フレーム剛性と重心位置の関係をおろそかに出来ない。また、使用できるカーボン・ロッドは世界に存在する工業製品として買えるロッドの中からしかチョイスできない事情から、選択肢には限界があるが、それを最大限有効にするためのブライドルの値は慎重に決定した。

知らない人もいると思うが、ロッドの組み合わせはTコネクターのサイズでかなり限定される。スパインとスプレッダーの接点には何社かのパーツ・メーカー製の既製品のTコネクターが使用されているが、このサイズは非常に少なく限定的である。よって、ロッド径を好きなような組み合わせることが出来ないことが多い。もし、そうしたいならば、Tコネクターを自分自身で作るしかないのだ。ところが高性能を追求すればするほど、Tコネクターはただ繋がればいいというほど単純な部品ではなくなる。だからチューブで簡易に作る訳には行かないのだ。Madではその首の長さを重視し(空気の流れの関係で)従来型のMadでもエスクでサイズを合致させたABS製のTコネををいちいち作ってきた。できれば、材質は柔軟で形は首の長さのあるものがいい。例えば、他メーカーで、何でこのロッドをスパインに選んだのかを考えると、そのメーカーは「Tコネクターのサイズの都合で。」みたいな言い分になるケースは意外とある。しかしMad-Rはそんなことは承知しない。

Mad-R240mo12.jpg (40384 バイト)微風時のカイト・フライングではフィネス系のトリックは大きなウエイトを占める。最近のフライヤーはいきなり3D系からトリックを覚えるためかフィネス系のトリックが苦手な人も多いようである。しかし、不足気味な風の中では主要になるのはフィネス系のトリックである。だから、フィネス系にも強いカイトでなければ困る。腹ばいの状態(つまりパンケーキで)で回転を続けるヘリコプターは一方向の回転でも両手50%ずつで回転をさせる。タズマシーンやシニックも両手使いのフィネス系である。スロットマシーンや540のような片手だけの引きではない。それをやりやすくするにはカイトが浮いたときの重心位置がどこに有るかは、回転のモーメントにかかわる大切なことである。特に仰向けのシニックでは、ノーズが起き出さないで左右にフィネスでレイジー回転させねばならないことから、Std仕様の場合と違う微風仕様では、これはとても重要になる。Mad-Rはそれらを考慮して作ってある。

Mad-R240mo03.jpg (48896 バイト)微風の中でのコメットはそう難しいテーマではない。カイトがその場で落下せず、圧が抜けてコメットすれば、バックステップ幅は最小で済むからである。その点でMad-Rはとても回しやすい。
ところがカイト的に最も難しいテーマは瞬時のヨーヨーである。超軽量なカイトはバックフリップさせるだけでも、セイルの空気抵抗で後転にブレーキがかかる。つまり、仰向けで止まってしまいやすい。ヨーヨーの場合はそこから更に半回転して360度まで回らねばならない。そのためには可能な限り小さい回転半径で回す必要があり、その間の効率的な重心移動が回転を助けなければならないのである。回転を助けるためにバラストを増やすなどはもっての他である。微風で使わないStd仕様ならばまだしも、SUL仕様ではそうは行かない。例えば、ブライドルが長いと後転半径は大きくなり、微風下のヨーヨーはより困難になる。またそういうカイトでは、もしヨーヨーをうまく巻けたとしても、今度はとても巻き戻し難い。
軽いSULでヨーヨーする場合、私はバックフリップで止まる瞬間にタイミングを合わせて、「ちょい引き」してすぐさまラインを緩めヨーヨーしていた。言わば、ツーアクションのヨーヨーである。これはバラストの少ないカイトでは有効である。瞬間的にやれば途切れはそうも見えない。それをしないでStd仕様のカイトようにスパッと速いルーイスでヨーヨーを入れる場合はカイトの能力が大きい。これを仕立てるのは、バラストが載せ難い軽いカイトにおいてはたやすいことではないのである。Mad-Rはスラックさせ過ぎないスキルさえあればそれが自由に出きる。

微風でヨーヨーに入り、そのまま飛ぶためには迎角が適正でないと飛行を続行できない。そのためStdとは少し位置を変えてヨーヨーコネクターを付けている。もちろんヨーヨーコネクターは内側からは引っ掛かかってしまわないMad-R特製のものである。

Mad-R240mo13.jpg (40652 バイト)微風用のカイトにトルクを与えるには普通は若干内振り的なブライドル配置にする。しかしヨーヨーの入りを重視し、ヨーヨーの巻き戻しまで考慮すると外振り配置になっている方がいい。ヨーヨーでバックフリップするにはトップ側のブライドルが短か過ぎるのは困る。しかし、微風で揚げるにはトップ側のブライドルが長いと揚げ難い。風も無いのに瞬間的にノーズを動かすためにはトップ側のブライドルは短いほうがいい。タズマシーンやシニックにはサイドのブライドルが突っ張ると具合が悪い。かといってそれに合わせ過ぎるとマルチ・レイジーから起きなくなる。と、このようにあらゆる点で相反する要素ばかりなのである。ブライドルは1ヶ所ずつ独立しているのではなくすべてが相乗効果で作用するので、徹底的に煮詰めた。トリック・カイトはチーム・カイトとは違い、多様性こそが武器なのである。それを1点で解決しなければならない。腕のいいブライドル・セッティングが求められる。(飛びのバランスはブライドルだけでなくウィスカー位置や長さや強さ、またフレーム剛性までが相互に影響するのではあるが。)

Mad-Rはこれらの大問題を完全に解決した。と言わない。でもかなり解決していると思う。それは複数の世界の第一級のSUL仕様のカイトと比較テストしながら開発したからである。Mad-Rは弱い風の中でのトリックがとても楽しい。フライヤーのスキル通りに動かせると思う。低い風速からトルクカーブが急速に立ち上がるセッティングにしているので、今までトルク不足で限定的なトリックに甘んじていた人にとっても面白いだろう。浮きまくるのにシャープに飛び、また、風速1m以下の微風から同じロッドのままで風速4mを少し越えるまで飛ばせる。それでも、壊れそうな感じはしないように作ってある。微風カイトは風速3mまで。とか、ショートラインのみ。とかの制約はMad-Rにはない。

また、Mad-Rは真っ直ぐに飛び、小さい角も細かく表現した飛びをするプレシジョン性能も高い。軽いからとてフラフラしたりはしない。もし、あなたがMad-RMad-Xを持っていれば、この2種だけで風速1m以下から風速10mまでカバー出来、あらゆるタイプの飛びをトライして遊べる。これほど楽しいものはないだろう。ただし、新しいMadのシリーズはハイエンドのユーザーを対象にしている。だから別段イージーさを売りにはしていない。もしベースになる最低限のトリックのスキルが無いフライヤーだと宝の持ち腐れになるかも知れない。しかし、既に中クラスのスキルがあれば一気に上級までのトリックの習得はできると思う。

(Text:Mad-R設計者 中野) 

 

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