あのNextUp-Stdの発売に続いて噂のWWが出た。R-Sky社のカイトで「WW」のコード名を付けるものは、他社ではSUL仕様と呼ばれる超微風用の仕様に匹敵する。つまり、最も風が弱いときに使用する究極の微風マシーンである。セイル部分の殆どは、イカレックスなどの繊維ではなく、風を通さない21gの超軽量なマイラーでしつらえてあり、リーディング・テープやノーズ素材も同時に厚さの薄い、軽量な素材である。R-Skyでは他のWWと同様、細かいところまで気を使って極めて軽いセイルを作り上げた。(このMylarは補強のための厚いMylarとは違い、とても軽い。Icarexが41g/uであるのに対し21g/uしかない。)
セイルの平面形はNextUpのStdの形状とは異なり、NextUp-LWの形状を受け継いでいる。よって、一般のカイトよりは若干ハイアスペクト翼ではあるが、その比率はStdほど顕著ではない。リーディングエッジなどの主要なフレームは細くて軽いSkysharkU2PTで構成されているが、意外なほど高いフレーム剛性に組まれており、力強く操作しても、取り立てて剛性不足は感じなかった。風速が1m以下の状態では、どのメーカーのSUL仕様にしても性能を発揮できる最低基準を若干満たしていないので、普通のSUL仕様では50歩100歩の域を出ないが、驚いたことにNextUp-WWの場合はしっかりとしたテンションが手に伝わり、その飛びに危うさは感じられない。地上で風速0.5m位であっても、風を逃がさないようにしてやれば、50ポンドのラインまで軽量なラインにしなくても、90ポンド30mのラインでとても滑らかに飛ばせられる。BackflipやFadeの状態でも容易に沈み込むこともなく、しばらくポカリと浮かび、そこからユックリと回してやれば、次々とコンビネーションでトリックを続けることができるほどで、とても楽しい。もちろん、その風速でHalfAxelやCascadeなどを織り交ぜても全く大丈夫で、遅いスピードで飛ぶストレートさえもしっかりと真っ直ぐに飛び、地上スレスレでもヘロヘロしたりはしなかった。
30m上空の風速が1mをちょっとでもオーバーすると、このWWは水を得た魚のように行動的になり、すべての反応は精度も増し、素晴らしく安定した飛びになる。ストレートやターンの性能はもともとNextUpは高水準であるが、WWも同様である。ターンもスパッと切れる感じがある。実際、微風にもかかわらず、通常のSUL仕様では得られない明確なテンションが伴っているため、挙動はしっかりと安定しており崩れ難い。切れ味がいい分、小さい角もきれいに表現できるので、どんな図形も描きやすいだろう。通常、SUL仕様というものは微風で上がる軽さはあるものの、揚っての飛びはユルユルで、飛びの質よりも揚りを優先しているものだ。そんな状況下では手応えがなく、トリックなんぞは容易なことではない。ところが、NextUp-WWの素晴らしいのは、この1m台の弱い風の中で、いかに緩い範囲であっても、トリックの感触はスタンダードの感触に非常に近い。しかも、このカイトにはバラストは一切載っていないのだ。
軽いものに極端に強い遠心力を求める(YoFadeのような)ものは無理であるが、細いロッドを折らない範囲のパワーで、殆どの3D系トリックは可能である。カイト全体のバランスで飛ぶ状態が作られており、バラストを載せる必要性はそれほど感じなかった。このままでOKである。もし、風速1m台後半から2m台を主眼にするならば、3gまでのバラストは効果があり性能を阻害しないだろう。しかし、それ以上は無用と思う。
動きのあちこちにNextUpのStdと共通する独特な味が感じられるのは元々DNAを同じくするとしても、かなりタイプが異なる仕様だけに不思議な感じがした。540Flatspinを回る姿勢やCometeの若干クセのある動き方も同じである。風が1m台後半になると激しい動きの瞬間はバッバッと風切音を発するが、その動きはとても鋭い。思い切りパワーを掛けて鋭く速いターンを繰り返すとそのたびに風切音が出るが、フレームは折れそうな気配も無く、また、こういう飛び方をしてもフライヤーは後退することもなく、とてもSUL仕様とは思えないくらいだった。
一般的にSUL仕様のカイトはプレシジョン系が強いとトリックが弱い、あるいはトリック能力が高いとバラストの重さで揚らない。あるいは遠心力が邪魔して図形が描き難い。このどちらかである。その両方を満足させようとすると、結局は風を必要としてしまうのである。微風で揚がるけれども、前進は息がつまるような進み難いトレースをし、トリックという程のものは何もできず、ただ黙々と飛ぶだけのSUL仕様があるが、そんなのは最早時代遅れである。NextUp-WWはバレエ競技にも使えるタイプのSUL仕様として作られているので、プレシジョン専用機ではないが、長いラインも使えるし、プレシジョン性もいいと思った。
もし、上空の風速が1.5mもあれば、CometeやYoyoなどのトリックにも対応できて、そのトリックレベルも高いものである。このWWはトレース性ではNES-WWをも超えていると思う。風速2mあれば、まるでスタンダードのようなキレ味でキビキビと飛ぶことが可能であった。ただし、Cometeの回転速度はNSE-WWの方が速かった。ブライドル設定は非常にいいので糸目を代える必要はなく(トップ側のみ応じたらいい)そのままで満足できる。
ショートラインで振り回すためのトリックカイトではないが、もし、無風下で飛ばす場合は、10m(最大15m以下)のラインを使い振り回せば、360度の空間が使える。ただし、サイズ的にはギリギリ一杯の大きさである。そんな中でジェイコブやバックスピンを激しく行ってもロッドはパワーに負けそうになかった。もし、風の弱いとき用に、いい微風カイトが欲しいと思っている人や、価格に代えられない何かを求める人にとっては、価値のある逸品であり、私自身これはSUL仕様のカイトとしては凄くいいカイトだと思うのでお薦めする。
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