RedBullエアレースがテレビで放映され、エアレースが話題になっているようです。しかし、日本ではあまり知られていませんが、もっと凄いエアレースが、ずーっと以前からアメリカでは行われているのです。RedBullエアレースは1機ずつ単機のタイムトライアル形式ですが、リノ・エアレースは違います。一斉にスタートし、抜きつ抜かれつの接近戦で、もの凄い爆音をけたててメインストレートを超低空で飛び抜けて行くのですから。観衆は陶酔しますね。かつて私はこのアエレースに完全にハマってわざわざ見に行ってました。予選から見るには3日間かかります。3日前の木曜日に到着し、日曜日の決勝まで居て、終わったらその日のうちに帰国です。(誰も仕事が忙しいので。)一緒に行っていた友人は日本人ですが、フェラーリのエンジンの専門家だし、また航空機エンジニアで、その道には相当詳しいセミプロですからね。
日本からはサンフランシスコ経由で乗り換え、ネバダ州のリノまで行き、そこからはレンタカーで砂漠の真ん中にあるステッド飛行場に行きます。この飛行場をベースに毎年秋にリノ・エアレースが行われています。
このRenoのNational Championsip Air Racesにはカテゴリーがいくつもあって、ジェット機のレースまでありますが、最も興味深いのは、プロペラ機のアンリミティッド・クラスです。
これは第2次世界大戦で使われた各国の戦闘機を改造し、(アンリミティッドすなわち無制限に改造できる。)エンジンの馬力は4000馬力くらいまで上げ、機体は空力の粋を集めて空気抵抗がないように改造し、主翼はスピードを上げるために短くカット、更に派手な塗装やスポンサーロゴは、まさに絵になります。スピードはプロペラ機とはいえ、時速800kmも出るのですが、信じられますか。4000馬力の轟音が目前を全開で通過すると、軽々しい音じゃない。ジェット音と同じで、寝不足の胃には堪えます。
今となっては貴重な、60年以上も前の戦闘機は、飛行機コレクターの間では非常に高価な取引がされているにも拘わらず、惜しげもなく大改造し、次々とエンジンをおしゃかにしながら、毎年このレースに大金かけて出場している人達がアメリカにはいるのです。
アンリミティッドの名の通り、改造無制限のクラスでは、どこをどのように改造しても違反になりません。何をやってもいいというデスマッチなので、エンジンの大幅なチューンニングアップは当たり前。座席位置を目一杯下に下げて、機体からは首だけしか出さないで、風防はヘルメット・サイズかと思うばかりに小さく改造することで空気抵抗を極限まで減らした機体も出現している。主翼や胴体のジュラルミンの継ぎ目すら空気抵抗になるので、すべてパテで埋めて研磨し、ワックスをかけてピカピカに磨きあげる。このようにして、とにかく空気抵抗を減らし、地上スレスレを、時速800キロもの猛スピードで目の前をぶっ飛ぶのであるからそれは凄い。プロペラ機の世界記録は今まではノースアメリカンP−51Dマスタングを改造し、コントラ・プロペラ付きグリフォン・エンジンの”レッドバロン”が出した平均時速499.018mph(798キロ)であったが、10年後グラマンF8F−2ベアキャット改造の”レアベア”が528.329mph(845キロ)を出し、今もまだ、その記録は破られていない。プロペラ機の速度の限界はこのあたりか。
カテゴリーによっては改造程度が低く、スピードも遅いが、その代わり昔の戦闘機をそのままの塗装で保存して飛ばしている者もいる。これはこれで珍しくも素晴らしい飛行機がいろいろ見れるので、エンジン音の違いなども聞き分けながら楽しめるものだ。まあイタリアで行われているビンテージ・カー・レースの、タルガフローリオみたいなものです。
ルールは簡単で、3日間の予選に勝ち抜いたレーサー機は予選タイム順に横一列に編隊を組み、先導する飛行機の後ろに続き、コースに進入、地上のマーカーを越えたらフルスロットルでスタートします。コースは大きなサークル状の角ごとに高いパイロンが立っており、そのパイロンの外側をターンしながら1周8.2マイルのオーバルコースを低空飛行で周回するのです。このコースにはストレートとコーナーがあり、最大速度の勝る機はストレートで追い抜きます。しかし、翼を切り詰めたりしていると、コーナーではギリギリのインを攻め切れず、大回りになると抜き返されます。これらカーレースに共通したコース取りがまた面白いのです。アメリカ人の応援はワーワーキャーキャーともの凄いですよ。
予選から見るために木曜日から行き、まずピットパスを買います。ピットパスが有れば、ピットにも自由に入ることが出来、オイルの匂いや焼けたエンジンの匂いを嗅ぎながら、真近で整備の様子などを見学できます。P-51のロールス・ロイス・パッカード製エンジンのオーバーホールなどを細かく見ると、こんな古いエンジンを最新の技術でチューニングアップしているのです。機体の改造も、ロッキードやマクダネルやNASAで最新のジェット機を設計している一流の技術者や空力の専門家が翼端のカットの断面の形状を決めたりしており、もうクルマのF1の世界と大差ない凄い人たちばかりがウヨウヨしているのです。しかも尋ねたことに答えてくれたりします。そして重要なことは、彼らはお金が目的でやっているのではないということです。何といってもアメリカはやっぱり凄いのですよ。アメリカの底力を見せ付けられますね。
興味のある方は是非行って見てください。お勧めです。最近はツアーも出ていますし、日本人の観戦者も増えていますので行きやすくなっています。
(Text &
Photo H.Nakano)






No1-No7 (Photo
by T.Matsuki)
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