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フライト・インプレッション

  line.JPG (3093 バイト)

NEXT -PKC

プレシジョン・カイトのジェフ・ハワードがPrecisionistの後継機として、約2年間の歳月をかけて完成させたのが、このNEXTです。究極のカイトというだけあって、実際、とてもいい飛びをしました。今までPrecisionistのユーザーが待ち望んでいた「ここんとこ、もうちょっとこうあって欲しい!」と思う性能が、そのままプラスされているのはとても嬉しいです。もともと、Precisionistはストレートとターンの優秀性を”売り”にしたカイトで、その名の通りプレシジョン(規定)性能の良さ、つまり正確な飛びを重視したカイトです。日本ではナンバーワン・フライヤーの鈴木朗さんがこれでトリックしていたことから、トリック・カイトと勘違いされているきらいもあります。しかし、Precisionistを個人バレエ競技に使ったトップ・フライヤーの殆どは、その最大のアドバンテージである、ストレートの速さと伸び、そして、ターンのキレと加速力を武器にしています。そのPrecisionistを元にして、更に発展し、改良型として、新しくNEXTが出現したのです。この開発には2名のアメリカ人チャンピオン・フライヤーの他に日本人の鈴木朗さんがテスト・フライヤーとして協力しています。

k_next240.jpg (51223 バイト)Precisionistの長所は絶対に失いたくない!と思っている人にとって、一番心配なことは、NEXTになっても、その部分の性能は維持されているのだろうか?でしょう。後継機の性能アップを図る反面、代償に失うものが有るケースは結構いままでも他のカイトではありました。しかし、NEXTにとっても、当然、最も重要な直進性能は、そのまま維持されていると確認しました。ただ、スピードについては約10%位ダウンしているようです。これはダウンしたと言う言い方は正しくなくて、スピードは意識的に、ここまで下げたと、解釈した方がいいかも知れません。もともと非常に速いカイトなので、これでもまだ充分に速く、マイナスは殆どないでしょう。世界的に個人競技のバレエ・スタイルが時代と共に変化して来ており、ピューピューと速く飛ぶばかりが、いいと思う人達も減って来ました。もっと、プラス・アルファのテクニックが求められています。NEXTは、その先も考えて一歩前進したのです。NEXTは競技ユースのみを考えて作られていますから、世界の競技傾向には敏感にならざるを得ず、取り残されないように、そのプラス・アルファを加えた反面、これ以上のスピードは必要無いと考えたのでしょう。
NEXTでは、まるで定規を当てたような、完全に真っ直ぐな飛びは誰でも得られます。それを腕で更に抑え込んで飛ばせば、もう完璧な直進性を持つカイトであり、これ以上の直進性を持つカイトは他にはそうはありません。真っ直ぐに飛ぶ時の感触も秀逸で、あのベンツのようなビターっとした走りの感じ、あるいはバターを良く切れるナイフでシューと切る感じ、そういう、えも言われぬいい曳きの感触で飛びます。つまり、飛びは空にしっかり貼りついており、決して水スマシのように速いだけのカイトと同一視してはなりません。
NEXTのハンドリングは少し重めの曳きで、しっかりとした直進をするにも拘わらず、左右のわずかな曳きによっての頭の動き出しは非常に早く、特に小さ目のオクタゴンの浅い角度や、深い角度のトライアングルも、実にシャープにきれいに表現出来るのです。

next200-2.jpg (40176 バイト)正確でキレあるターンの能力もPrecisionistの血統でしたが、ターン能力の高さもNEXTにはそのまま受け継がれています。また、完璧な直進+正確で速い角ターンやループからの速い脱出加速も、もちろん受け継がれています。ただ、Precisionistは、基礎的なトリック以外のフィネス系のトリックなどは、「カイトとしては出来るけれども、腕が無いとやるのは難しい」のが難点でした。それがNEXTでは、フィネス系のトリックが自在にできるだけでなく、それを行なう容易ささえも加わりました。Precisionistではトリックの成功率が低かったので、競技でトリックを行なうことは敬遠気味でした。そのため、トリックを重視するタイプのフライヤーがExcessに鞍替えするケースが増加した経緯もありました。しかし、NEXTになっては、容易に540フラットスピンやフェード、カスケード、ポイズナイビーが出来るので、今までの鮮やかな飛びに加え、難度の高い技が、個人バレエ競技にも容易に入れられるのは、さぞ魅力でしょう。

NEXTは一見Precisionistの形態を踏襲していますが、実際には翼型も少し末広がりになっていますし、セイルの面積の一部も少し小さくなっています。大きく異なるのはウィスカーで、外側で10ミリ、内側では17ミリ長く、これによってラフトはいままでよりも深くなりました。この変化は明かにトリック性、つまり、腹ばい状態での性能の向上を狙っています。NEXTでの540フラットスピンは何と、アクセルよりもずっと容易に行えます。NEXTでの540は最早トリックでは無いくらいに簡単なトリックです。

k_next240-99.jpg (31979 バイト)NEXTはPrecisionistに比べ、フェードでもポイズナイビーでも、トリックに拘わる操作性は大幅に改善されました。アクセルから入るフェードは実に簡単です。しかしながら、腹ばいからのフェードをするには、しっかりとした押し出しが必要で、曳き戻しもしっかりとしたフォロースルーが必要で、Precisionistの味に近いところもあります。NEXTを押し出して腹ばいにすると、カイトはピタッと静止した、完全な水平を保ちます。それは一瞬の内にパッと止まり、その時はラインは張っています。これは行き過ぎもしなければ、手前過ぎもしない自動的にピシッとセットされます。それに合わせて、曳き戻せば、非常に簡単に、とても奇麗なフェードが出来るという訳です。フェード状態での安定感はPrecisionistそのもので、NEXTも同様にそのままフェードを長く維持することができます。フェードからの曳き戻しはExcessと比べると、手先だけの曳きでは不充分で、しっかりとしたフォロースルーを求めます。このまま、ポイズナイビーに入ると、充分な押し出しが行われているかどうか、そしてフォロースルーが完全か不完全かによって、これが長続きするかしないかが決まり、どちらかといえば、リーチのある人の方がやりやすい結果となるカイトです。NEXTで行うポイズナイビーは、フェードから腹ばいに戻るときの沈下率が非常に小さいので、同じ高度からでも、より多くポイズナイビーが繰り返せます。また、地面すれすれでも、まだ落ちずに出来るのはトリック・マニアにとっても嬉しいことでしょう。NEXTではフェードやポイズナイビーにおける成否はただフォロースルーの問題だけになっており、(ただし、風が極端に弱いと難しくなる)Precisionistのような”スイートスポットが小さい”という問題は完全に解消されています。よって、ただ単にカイトの慣れだけで済み、フェード系のトリックも、いまでは、難しくないカイトになっています。

next200-3.jpg (39709 バイト)Precisionistでも絶大な信頼感のあった、ストール性の良さもまた完全に受け継がれています。左右のバランスはとてもいいので、サイドスライドは1発で入力でき、そのスライドは奇麗に長く続きます。そして、そこからのコイントスも、腹ばいの浮きの良さから楽々とできます。また、明かに他のカイトと比べ、アドバンテージが高いのがランディングの能力です。NEXTはストール・ランディングやスパイク・ランディングにおいても、まず失敗のないカイトです。ランディング性能なんて、と思いますか。一見、ランディングは当たり前のようで、その精度と成功率になると、なかなかそうも行かないカイトが実のところ多いのです。通常、スパイク・ランディングが容易なカイトは、ランディング全般が安全パイなのですが、このランディングに信頼が置けるカイトは、特に競技においては、心強いものがあります。NEXTは風が強まっても、この高いランディング性能に変りはありません。NEXTのランディング性能の高さは、世界的に見ても第一級のものであると言っても過言ではありません。

ジェフ・ハワードがNEXTを作る際、よほど腹ばいに強いカイトにしたいと考えて作ったようで、NEXTは容易に腹ばいになります。ところがあまりにも容易に腹ばいになるために、ウォールアクセルなどの際に突っ込み過ぎると、腹ばいから戻り難い傾向が見られました。つまり、普通にやると、幾分、入り込み過ぎになりやすいため、行き過ぎて、戻る前に失速状態になりがちです。これを防ぐためには、入り込み過ぎる前に引き戻すか、入り込んでしまったら、ここで540フラットスピンをやって、誤魔化すのがベター(?)です。これはカスケードでも長く連続させようとすると生じやすく、この部分は浅めで起すなど、多少の慣れが必要です。この多くはトップ側のブライドルの問題で、直進性を良くしようとすることと相反する要素なので、不注意にブライドルをさわるとストレート性に影響する恐れがあります。まあ、当面は慣れるのが一番でしょう。

next200-1.jpg (40681 バイト)NEXTはPrecisionistにExcessのトリック性能を、そのままをくっつけたようなカイトになりました。ExcessはPrecisionistのマネはできなかったが、PrecisionistはExcessのマネが出来た(?)ということでしょうか。私の場合は普段Excessを使って来たので、手がExcess操作の手になっています。だから、トリックはまだExcessの方が慣れでやりやすいと感じます。(Precisionistを半年間、全く飛ばさなくて、ある日突然Precisionist を飛ばそうとしたら、以前のようにうまく飛ばせなくて、トリックが出来ず、リハビリを必要とした。そういうやつなのです。) Excessは多少雑な扱いでトリックしても、それなりに見える点がいいので気が楽ですが、Precisionistはそうではなかったですから。NEXTは、Precisionistほどじゃないですが、いくらトリックが容易になったとはいえ、やはり、ある意味で正確な操作を求めます。ちゃんと操作して!と言っているようです。他のカイト以上に完璧なトリックをしようとする自尊心の高いカイトだと思います。よって、これに慣れてNEXTの手になってしまうと、トリックの正確さではExcessではちょっと敵わない。と感じます。

NEXTは、ただ単にPrecisionistをトリックするようにしたカイトではなくて、トリックをやる以上、正確に、そして完璧に行えるように、水準の高い思想の元で作られていると思います。それはある意味で競技に勝つことを強烈に意識したカイトです。これはジェフ自身がそう言っています。NEXTを操る時、もし、操り難いと感じる部分があったなら、それは正確な操作が行なわれていないことであり、つまりは自分に悪いクセがついていないかを疑うべきだと思います。正確な腕をもってするならば、他のカイト以上に完璧なトリックや完璧なマヌーバをやれるカイトだけに、モノにすれば怖い存在になるに違いありません。

プレシジョン・カイトはジェフ・ハワードによって運営される非常に小さなカイト・ワークスです。その小さなワークスだからこそ、こんな水準の高いこだわりカイトが生まれるのです。エスクでは、世界でエスクしか存在しない、限定版カスタム・カラーのNEXTを、エスク自身でデザインし、ジェフ・ハワードに特注しました。オリジナルな個性を重視するフライヤーのためにです。(エスクのカタログ頁・参照)これは工場生産品ではなく、1機1機をジェフ自身の手で特別な思いで縫製し、彼自身の手でロッドを組み込み、ハンドメイドされています。また、ジェフの手による完璧なワークスのセッティングが施されています。(よって、不用意にブライドルをいじくり回すのはお薦めしません。5mmで性能が変りますから。)これは既製品販売の一般カラーのNEXTとは異なります。もちろん、ジェフ・ハワード自身のサイン入りです。思い入れを持ったNEXTを所有したい方に末長く大切にしてもらいたいカイトです。
なお、エスクのカスタム・カラーのNEXTには現在、既製品NEXTに存在しないNEXT-SULもご用意しています。Std仕様のNEXTと合わせてお持ちになると一層、性能が発揮されます。

<追伸>
next200-4.jpg (41893 バイト)2004年4月のフランスのベルク・シュール・メールで行なわれたチーム世界選手権において、アメリカから参加した”カッティングエッジ”がNextを使用して、第3位に入賞しました。(我がチームのカミカゼはカッティングエッジに敗れ、惜しくも第4位になりました)この戦いを見ると、もちろんカッティングエッジのフライヤーのスキルの高さがあってのことですが、Nextの良さを目一杯引出しての結果である事が明らかでした。Nextだからこその正確なコントロール性は、鋭角で細かい動きのルーチンにも正しく反応していましたし、大きな直線やターンでは、ストレートの美しさと、余裕ある加速力によって、演技は安定感溢れるものでした。微風下においてもNextは決してチョロチョロしない飛びをするので、フォーメーションが崩れず印象も非常に良かったです。また、Nextの卓越したランディング性能はここでもフルに発揮され、カッティングエッジは全機でスタックしたままランディングするなど、容易でないルーチンでのランディングをただの1回のミスもなく全員揃ってバチッと決めていました。チームでのランディングは非常に重要で、これをミスるのは、せっかくの演技を台無しにしてしまい、そういう意味でランディングに不安のあるカイトはチームでは特に鬼門です。
Nextには正式なVentが無いのですが、(後で出したVentはあまり良くない)カッティングエッジはNEXTを自ら改造デザインし、自前のVentを持って来ていました。これは大会前日のデモンストレーション以外に、本番では強風が吹かず、全く使うチャンスがなかったので、多くの人々はその飛びを目撃していません。私が事前のデモンストレーションでその飛びを見たところ、強風下(風速15mくらい)でも極めて安定していました。このVentは世界大会の全チームの中でも1,2を争う位いい出来だと思います。風速15〜16mになっても、破綻はなかったし、もし、本番に使うことがあったら(本番は微風だった)威力を発揮したでしょう。このNext-Ventは近くでしっかりと観察したところ、セイルの空きデザインはMadのVent(社内番号4B型)にとても類似した位置での空け方だったので、大変興味がありました。(Madの場合はバックフリップさせるカイトなので内側の大きな切り込みは避けていますから、ちょっと違いはありますが、他の点では理論的な共通性がありました。)

                                                                            (textエスク中野)
                                      
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